弔井 葬子さんは「女」というタイトルで【140字以上】の文章を書いてください。 http://shindanmaker.com/181753
◆◆◆ 青←今
ビデオの女はどう見たって不細工という部類に入ると今吉には思えた。
家は親がいるから駄目だと言って、青峰が持ち込んだいかがわしいビデオの展開を、部屋を貸している今吉も見るともなし、聞くともなしに追っていた。画面の中では、どうやらこれが主演と思しき女が、学生服を着た男(制服を着ているというだけで若くは見えない)に腰を擦りつけ迫っていた。女は色情狂の設定で、戸惑う年若い男のアレを強引に…というわけらしい。
「すげぇ…こんなんされてみてぇな。」
テレビの画面から目を放さず青峰がそう言ったので、今吉は眉を顰めて青峰の顔と、それからテレビのモニターを交互に見比べた。女はいよいよ下着を脱ぎ捨てて男の上に跨り体を揺すりはじめてしまう…。こうして見るとあまりだらしのよくない体だ。体の振動にあわせ余計な肉が揺れている。わざと蕩けた顔を作っているせいでうつろな目と半開きの口の見栄えがよくなかった。少なからず今吉の審美眼においてはそうだ。
「ブサイクやん。」
「…なんだ、アンタ女に厳しいんだな。」
意外だというような、少し驚いたような顔を青峰はして見せた。
青峰の方こそ、すれ違う大抵の男が振返ってしまうような美形の、(それに加え胸の大きな)、幼馴染に日頃ブスと言ってのける癖にこういうときは審美が甘いのだ。
「つうか、やれるんならなんでもいい。俺は。」
思春期の少年らしい明け透けさで青峰はそう言って手足を投げ出した。やりてぇな。青峰がそう呟いたので、今吉もつい欲を持った目で青峰を振返った。
よくない期待をしている。
「ほんなら、してやろうか。ビデオみたいなこと。」
今吉は、用心深い。
はじめから、青峰の反応次第ではすぐに冗談だと言って取り繕えるような、つかみどころのない曖昧な笑みでそれを言った。からかってニヤついているようにも、誘惑しているようにもとれる筈だ。指が震えそうになるのを押し隠して今吉は青峰の腿に手を触れた。
青峰は自分の腿の中途半端な位置に置かれた今吉の手を黙って見下ろしていたが、その様子があまり鼻白んだようだったので、ああ、これは駄目なんだと今吉は悟った。
そうして一瞬早く絶望する覚悟を決めたのに、やはり青峰の口から出る言葉は今吉を粉々に打ち砕くのだった。
「…なんか、アンタ、気持ち悪ぃな。」
これ以上ないくらい正直なそれが青峰の感想だった。
女でさえあったら、どれだけ容姿がまずくてもセックスだけなら拒まれないというのに。
しかたなくて今吉は、貼りつけた表情をぼかして笑い声をあげてみせるのだった。冗談や。本気にしたんか、…純粋やなぁ。そんな風に笑ったまますっとテレビの映像に目をそらす。
先ほど青峰の太腿に手を置いたとき、ほんの少し手の甲に掠った熱が今吉を切なくさせていた。勃っている。青峰を勃起させたのはビデオテープの女だ。
「ほんま、ぶっさいくやわ。」
◆◆◆ 青←今
ビデオの女はどう見たって不細工という部類に入ると今吉には思えた。
家は親がいるから駄目だと言って、青峰が持ち込んだいかがわしいビデオの展開を、部屋を貸している今吉も見るともなし、聞くともなしに追っていた。画面の中では、どうやらこれが主演と思しき女が、学生服を着た男(制服を着ているというだけで若くは見えない)に腰を擦りつけ迫っていた。女は色情狂の設定で、戸惑う年若い男のアレを強引に…というわけらしい。
「すげぇ…こんなんされてみてぇな。」
テレビの画面から目を放さず青峰がそう言ったので、今吉は眉を顰めて青峰の顔と、それからテレビのモニターを交互に見比べた。女はいよいよ下着を脱ぎ捨てて男の上に跨り体を揺すりはじめてしまう…。こうして見るとあまりだらしのよくない体だ。体の振動にあわせ余計な肉が揺れている。わざと蕩けた顔を作っているせいでうつろな目と半開きの口の見栄えがよくなかった。少なからず今吉の審美眼においてはそうだ。
「ブサイクやん。」
「…なんだ、アンタ女に厳しいんだな。」
意外だというような、少し驚いたような顔を青峰はして見せた。
青峰の方こそ、すれ違う大抵の男が振返ってしまうような美形の、(それに加え胸の大きな)、幼馴染に日頃ブスと言ってのける癖にこういうときは審美が甘いのだ。
「つうか、やれるんならなんでもいい。俺は。」
思春期の少年らしい明け透けさで青峰はそう言って手足を投げ出した。やりてぇな。青峰がそう呟いたので、今吉もつい欲を持った目で青峰を振返った。
よくない期待をしている。
「ほんなら、してやろうか。ビデオみたいなこと。」
今吉は、用心深い。
はじめから、青峰の反応次第ではすぐに冗談だと言って取り繕えるような、つかみどころのない曖昧な笑みでそれを言った。からかってニヤついているようにも、誘惑しているようにもとれる筈だ。指が震えそうになるのを押し隠して今吉は青峰の腿に手を触れた。
青峰は自分の腿の中途半端な位置に置かれた今吉の手を黙って見下ろしていたが、その様子があまり鼻白んだようだったので、ああ、これは駄目なんだと今吉は悟った。
そうして一瞬早く絶望する覚悟を決めたのに、やはり青峰の口から出る言葉は今吉を粉々に打ち砕くのだった。
「…なんか、アンタ、気持ち悪ぃな。」
これ以上ないくらい正直なそれが青峰の感想だった。
女でさえあったら、どれだけ容姿がまずくてもセックスだけなら拒まれないというのに。
しかたなくて今吉は、貼りつけた表情をぼかして笑い声をあげてみせるのだった。冗談や。本気にしたんか、…純粋やなぁ。そんな風に笑ったまますっとテレビの映像に目をそらす。
先ほど青峰の太腿に手を置いたとき、ほんの少し手の甲に掠った熱が今吉を切なくさせていた。勃っている。青峰を勃起させたのはビデオテープの女だ。
「ほんま、ぶっさいくやわ。」
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